福本莉子 look.1

なにげない日常を大切に思える
役を演じることは人生を豊かにする

2016年に「第8回東宝シンデレラオーディション」でグランプリを獲得しデビューして以来、映画やドラマ、舞台など幅広く活躍する俳優、福本莉子さん。さまざまな物語の中で、自由に、そしてみずみずしく演じる彼女を見ていると、心を震わされ、エネルギーをもらえる。それは、福本さんが“演じること”に運命にも似た愛情を注いでいるからだろう。look.1では、シックなブラックスタイルに身を包んだ彼女に、仕事に対する思いを聞いた。

福本莉子

ブラック一色でまとめたモードな着こなしを披露するlook.1。ゆったりしたボリューム感とコンパクトな丈のアンバランスが目を引くナイロンブルゾンに、しなやかなシルエットを生むロングスカート。軽快ながら、色気を感じるスタイリングを見事に着こなした。
「私服でも黒の服でまとめた服装が好きでよく着るのですが、素材感とシルエットともにこんなにかわいいブルゾンは初めて。ボリュームのあるトップスをドローコードで絞りながら、ゴムのベルトで引き締めて斬新なシルエットに仕上げていておしゃれ! ロングコートを合わせた女性らしい雰囲気も好きです。黒のスニーカーは持っていないので、白いステッチをアクセントとして取り入れているところもすごく勉強になりました」

福本莉子

今の気分の服装を聞いてみると、今回着たようなアクティブなエッセンスが入ったミックススタイルとのこと。
「ジムやサウナに行くときや、仕事でも連日現場に足を運ぶ映画の撮影期間は、動きやすい着こなしをするので、カッコいいスポーティミックスに憧れがあって。まさに、今着ているシックだけど軽やかな印象のあるコーディネートはすぐにマネしたいです!」
新しいアイテムを着こなし、柔軟に感性をアップデートする姿勢は、彼女の魅力につながっているようだ。

「いろいろな作品、いろいろな方たちと出会うことで、自分の可能性を広げていける」。俳優の魅力についてたずねると、福本さんは目を輝かせながら、すぐにそう答えた。
「お芝居では、自分とまったく違う考え方を持っている人を演じることや、それによって日常を違う角度から考えるきっかけになることがあります。そういった作品に出会うと、一日一日を大事にしようと思えたり、当たり前であるために普段なんとなく見逃している大切なことに気づかされる瞬間もあります。また、お仕事でしか出会えない、いろいろな感性を持っている方から、お話を聞くことも楽しいですし、ためになります。お芝居って普段の生活とすごく密接していて、私の人生にとって重要な要素なんです」

福本莉子

彼女にとって、俳優は仕事である以上に、人として成長する大きな糧と捉えているようだ。さらに、そこに意味や喜びを見出している。そんな福本さん自身も、最初からそう思えていたわけではなく、大きな山を越えるほどの大変な作品を経て、今の価値観に至った。
「お芝居が楽しいと思ったきっかけは、初舞台、初ミュージカルで初主演を務めた『魔女の宅急便』です。経験することがすべて初めてで、目の前にあるやるべきことが本当に盛りだくさん(笑)。大変に思うこともいっぱいありましたが、歌稽古や本番を含めて携わった半年が、自分の人生の中でいちばんがんばったと思える期間になったんです。それまでも中学受験や勉強など努力した場面はありましたが、がんばりが思い出になることはなかった」

「公演期間中は、毎日マチネとソワレがあって、同じ内容を繰り返すのですが、同じじゃないんです。その日のお客さんによって舞台の空気が変わったり、午前と午後でも客席からの雰囲気や反応が違ったり、さらに私の気分や気持ちも少し変わったら共演する方のお芝居も変わったり。その場で作られていく即興に近い感じがあって、お芝居ってすごく面白いなと感動しながら、演じきることができました。このミュージカルを自分なりに一生懸命頑張れたという事実が、一つの自信につながりましたし、お芝居の魅力を知る入り口になりました」

福本莉子

お芝居について語る時の福本さんの顔は、とてもイキイキしている。演じる役に向き合い、自分の糧にするために彼女が必ずやっていることがある。それは、いつでも戻ってこられる場所を作っておくことだ。
「私は、作品に入る前にすごく準備していくタイプ。原作があれば何回も読み返しますし、原作がない場合は、名前と年齢、性格、家族構成などの情報をぱっと見てわかるようにノートに書き留めていきます。これをしないとすごく不安なんです(笑)。お守りみたいな感じです。撮影期間中に読み返して、役柄について思い出すことも、新たに気づくこともあるんです。あと、現場で思ったことや印象に残った出来事も一緒に書いているので、取材や舞台挨拶の時に改めて読むことも。お芝居を始めた高校生から書いていて、先日一冊書き終わりました!」
ときに大人のように真剣な眼差しで、ときに子供のように無邪気に振る舞う、そんな福本さんから、眼が離せない。

→look.2では、福本さんのファッション観についてインタビュー!


Direction : Shinsuke Nozaka
Photo, Movie : Masato Moriyama (TRIVAL)
Stylist : Itsuka Watanabe
Hair, MakeUp : Yoko Fuseya (ESPER)
Text : Hisamoto Chikaraishi (S/T/D/Y)

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